80年代初頭はSM作品やマニアックな作品を発売していたが、80年代中盤以降の作品を語る上で欠かすことができないのは、豊田薫、神野龍太郎、島村雪彦といった、3人のメーカー監督だ。
豊田監督は、「サムビデオ」レーベルで独自のカメラワークを駆使し、『口全ワイセツ』『禁姦色』シリーズといったヒット作を次々と発表。
神野監督は、豊丸や沙也加といった淫乱女優をスターダムに押し上げ、『人間発電所』シリーズなどの作風から“淫乱路線の雄”などと呼ばれた。
島村監督は、女優を美しく撮ることにこだわり、超A級美少女の登竜門といわれた『処女宮』シリーズを確立。同時に、『夢どれい』といったSM大作も手がけた映像派監督だ。
個性の異なるこの3人の名監督が、メーカーカラーを明確に構築させていくことになる。
80年代なかばは、ハード路線の「サムビデオ」作品がメーカーを牽引したが、後半になると、単体女優専門の「ミス・クリスティーヌ」レーベルが登場。他社でデビューしたトップアイドルの桂木麻也子らの作品をリリースし、同時に東清美や葉山みどりといったアイドルをデビューさせていった。
そして88年、伝説のアイドルシリーズ『うぶ毛のヴィーナス 処女宮 葉山レイコ』を発売。
主演の葉山レイコが、タレントから転身した女優ということも話題となり、大ヒット作品となった。この頃はアイドル派の葉山レイコや林由美香、セクシー派の村上麗奈をデビューさせる一方で、豊丸や樹まり子のような淫乱派といわれた女優たちの作品をリリース。
単体女優メーカーとして、AVユーザーに認知されていった。
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90年代に入ると、「単体女優メーカー」としてのメーカー色はますます色濃くなっていく。
90年だけでも、『処女宮 第2章 星野ひかる』の星野ひかる、『ヴァージン・エクスタシー 官能姫 白石ひとみ』の白石ひとみを筆頭に、『淫魚姫』の藤本聖名子、『絶頂クィーン』の佐藤江珠など、話題性とビジュアルを兼ね備えた新人女優が次々とデビュー。と同時に、他メーカーでデビューした人気女優の工藤ひとみ、松本まりな、仙葉由季らの作品も発売。
浅倉舞のデビュー作、『処女宮 第3章』が発売された92年になると、このあとメーカー監督として活躍していく笠井雅裕監督や森口緑監督、あるいは個性派の伊勢鱗太朗監督、映画畑出身の片岡修二監督といったように、ディレクター陣の顔ぶれも個性豊かになっていく。
90年代なかば以降は、94年に『官能姫 第3章』でデビューした麻宮淳子をはじめとしたAV女優が、当時人気の深夜TVバラエティ番組に次々とレギュラー出演。番組の知名度があがると同時に、女優たちの知名度も全国区のものとなっていった。
96年からは個性派メーカーV&Rプランニングで腕をふるっていた、カンパニー松尾監督とバクシーシ山下監督が、『ザ・プライバシー「SEXが好きだから…」』(松尾監督)、『エリートモデルズ』(山下監督)で監督として参加。
96年に『新・官能姫 第2章』でデビューした小室友里ら「単体女優作品」と、松尾監督や山下監督らが作り出す「企画作品」との両輪で、90年代後半はメーカーとしての“振り幅”を広げられた時代となった。
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87年に『快楽のイリュージョン 夜』でデビューした東清美と、翌年『うぶ毛のヴィーナス 処女宮 葉山レイコ』でデビューした葉山レイコは、メーカー認知に大貢献した女優だ。“アズキヨ”の愛称で親しまれた東は、斉藤唯(代表作は『禁姦色2 受胎告知』)とともに、88年の“2大アイドル”といわれて大人気になり、葉山は「タレント出身アイドルがAVに出演」ということで大きな話題になった。
88年に『発情感染』でデビューした村上麗奈だが、代表作といわれる『口全ワイセツ4 のどちんこ激震』は、彼女の淫乱性を最大限に引き出した作品として有名だ。
一方、同年に『吸淫力』でデビューした豊丸は、絶頂時に白目を剥くという壮絶なアクメと、なんでも“呑み込む”バフォーマンスで淫乱派女優の頂点に立ち、各方面で話題をふりまいた。
89年にアイドル女優として『しがみつく18歳 お嬢様はしたない』でデビューした林由美香は、アイドルキャラながら常に“本番”を公言するほど、仕事に対しても前向きな女優であった。
そして90年、星野ひかるが『処女宮 第2章 星野ひかる』でデビュー。妹のような親しみやすい美少女キャラで大ブレイクし、『処女宮』シリーズを広くユーザーに知らしめることに貢献した。
さらに同年、『ヴァージン・エクスタシー 官能姫 白石ひとみ』でデビューした美人女優として名高い白石ひとみは、休業後の翌年に『完全復活 白石ひとみ 新・官能姫』で復活。白石は92年に美貌のお嬢様女優として『~ヴァージン・リップ~ 処女宮 第3章』でデビューした浅倉舞と、人気を2分する大活躍をみせた。
深夜バラエティ番組にも出演して人気の麻宮淳子は94年、『官能姫 第3章 抱きしめて…』でデビューし、その後も女優として長く活躍した。
のちにアジアでも大ブレイクする夕樹舞子がデビューしたのは、95年の『処女宮「卒業」』。一度引退し、女優として復活した後、ストリッパーとして現在も活躍している。
ユーザーのみならず、多くの業界人たちからも愛され続けた小室友里は96年、『新・官能姫 第2章』でデビュー。引退後はタレント、ライターとして活躍中だ。
98年に『ワイルド爆乳』でデビューした巨乳女優の夢野まりあは、AVだけでなく女子プロレスラーのほか多方面の活躍をみせた女優で、現在も熟女優として活動中。
類い希な美乳と美脚で人気の鮎川あみは99年、『新・官能姫 〔第8章〕』でデビュー。“ギャル系アイドル”として、長い人気を誇った女優であった。
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豊田薫監督はメーカー初期のヒットメーカーで、『奧までのぞいて』『禁姦色』『口全ワイセツ』といったシリーズを、次々とヒットさせていった人気監督。
彼はカメラアングルや照明、マクロ撮影といった“映像美”にこだわる一方で、いかにボカシを使用せずにフェラチオを生々しく捉えられるか──といったような、“性描写”にもこだわった。また映像のみでなく、女優の魅力を最大限に活かすことに長けた手腕を持つことでも知られている。
神野龍太郎監督は、『吸淫力』で豊丸といった類い希な淫乱女優を世に送り出したことで有名になったことから、“淫乱派路線の雄”などともいわれたが、淫乱派女優、清純派女優、そして素人と、分け隔てなく作品を発表していった監督。
ただ、前出の豊丸や、『その女変態につき』の樹まり子、『天下無敵』の沙也加といった、淫乱派女優作品で本領を発揮したことは、誰もが認めるところである。
島村雪彦監督は、『処女宮』や『官能姫』といった新人女優のデビューシリーズや、『夢どれい』のように、人気女優を起用したドラマ作品を多く手がけた人気監督。
とくに女優のデビュー作品では、イメージ映像、カラミシーンともに、徹底して“印象的映像”を追求。新人女優の初々しさと、その女性の最も美しい“シーン”を切り取ることにこだわり続けた。
カンパニー松尾監督は、V&Rプランニング時代から一貫して『ザ・プライバシー「処女なんです…」』のような、ハメ撮りと素人ドキュメントにこだわり続けた監督。監督が醸し出すハメ撮り独特の空気感と、素人女性とのリアルなSEX映像を支持するファンは多い。
その他、代表作に『テレクラキャノンボール』シリーズがある。
バクシーシ山下監督は、素人ドキュメント作品で唯一無二ともいえる個性を発揮する監督。女性の真実の姿を追求するその手法は、時に過激過ぎるといわれることもあるが、サブカルチャーを好むAVファンからは高い支持を受けている。
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80年代創世記のメーカーカラーは、「SAMM」レーベル作品に代表される“SM”、あるいは“フェチ”的なイメージが強かった。
これが84年頃になると、“AV女優”という呼称が定着し、女優作品に特化した「ミス・クリスティーヌ」レーベルが生まれる。
その一方で、SM小説の大家、団鬼六原作・脚本による『夢どれい』(87年)発売を期に、「ゴールデンサム」レーベルが誕生。これは人気女優とハード大作という、独自のコンセプトを持つレーベルであった。
その後、女優専門レーベルとして「ティファニー」が加わるが、このレーベルをAVユーザーに広く認知させたのが、『処女宮 第2章 星野ひかる』の星野ひかるであることは誰もが認めるところだろう。
93年になると、素人女性を起用する「Q」レーベルが登場し、よりバラエティに富んだ企画作品を生み出していく。
翌94年には、SMに特化した「奇譚クラブ」レーベルが登場、原点回帰ともいえる独自のSM世界を構築していった。
95年に素人企画専門レーベルとして登場した「ドカン」だが、翌年からディレクターとして参加したカンパニー松尾監督専門のレーベルに特化され、“素人ハメ撮り”という、これまでメーカーにはなかったカラーの作品を提供していった。
同じく96年、松尾監督同様V&Rプランニングから移籍したバクシーシ山下監督の専門レーベル、「ドキュメント」が誕生。山下監督独特の人間描写で、素人女性の真実のSEXを“ドキュメント”した作品を次々と発表していった。
98年には、“厳選したアイドル女優だけを起用する”というコンセプトで生まれた、「FOR YOU」レーベルも登場した。
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メーカー名、及び「SAMM」というレーベルをユーザーに知らしめたシリーズとして有名なのが、85年からスタートした『奧までのぞいて』シリーズだ。ブリーフの上から舐め回す女優の舌使いをマクロ描写で丁寧に撮影し、「ボカシを入れずにフェラチオシーンを生々しく再現した」として大いに話題となった。
86年からスタートした『禁姦色』シリーズは、作品数こそ多くないものの、“近親相姦”というアブノーマルなテーマを扱った禁断のドラマとして、ビデオ評論家たちから高い評価を受けた作品だった。
前出の2つのシリーズ同様、豊田薫監督による『口全ワイセツ』は、87年にスタートしたメーカーを代表するロングシリーズ。『奧まで~』同様フェラチオ描写に拘った作品だが、出演女優の個性を最大限に引き出した人気シリーズでもあった。
超淫乱派女優の豊丸主演で話題をまき、88年にスタートした『人間発電所』だが、その後も旬の女優の淫乱性を捉えた人気シリーズとして定着していくことになる。
葉山レイコ主演で88年にリリースされた『処女宮』は、“厳選された美少女AV女優のデビュー作品”として、星野ひかる、浅倉舞、夕樹舞子ら人気アイドル女優を続々と輩出し、今もメーカーの核を成すロングシリーズだ。
また、90年にスタートした『官能姫』シリーズも『処女宮』同様、白石ひとみ、麻宮淳子、小室友里ら人気アイドルを世に送り出している。
一方、94年スタートの『やりすぎ家庭教師』は、人気女優たちが“家庭教師”になり、年下男性をSEX指南するという企画性の高い女優シリーズ。現在もこのシリーズは発売され続けており、人気の高さを証明している。
『girlfriends ピュア系の女の子ドキュメント』はターボ向後監督による00年からスタートしたドキュメント作品で、素人女性ならではの自然な表情や息づかいまでをも捉えた人気シリーズであった。
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87年のデビュー作『いちころ』で、高橋めぐみはスレンダーボディと三原じゅん子似のお姉さま顔ながら、ちょっと不釣り合いともいえる女子校生役を演じた。高校時代体操選手だったこともあり、その後筋肉質ボディを強調したマニアックな作品やアクション系のオリVにも出演し、話題になった女優でもある。
豊丸らとともに、淫乱女優四天王といわれた沙也加。彼女は他の3人と違って見かけはロリータ女優でありながら、SEXシーンではまるでなにかに取り憑かれたような鬼気迫る狂態を演じ、スタッフはおろか男優陣をもひるませる淫乱女優であった。
また、変わり種といえば、その最たる女優が、『あぶらかたぶら! コンチータの淫ら祈り』(93年)でデビューした松本コンチータだろう。芸人の松本人志が名付け親という彼女は、「マラナメ教の開祖」などという摩訶不思議なキャッチフレーズで、以降もユニークなタイトル作品に出演。ただ彼女の場合、AV女優業よりその後のタレント業の方がメインフィールドとなっていったようだ。
また、AV界の元祖“ナマドル”として有名なのが、95年に『ミス東北美人 腰のフリがよかっぺナ!』でデビューした桜沢菜々子。見た目は都会的美女であるにもかかわらず、見事な東北弁とのミスマッチで、撮影現場はいつもユルくて和やかな雰囲気に包まれていたそうである。