【映画】青山未来主演「あんこまん」を観た。
2014.7.9
● ● ●
※作品の内容に関する記事も含まれています。
初春。まだ肌寒かった3月下旬、h.m.pに来社した青山未来さんから「映画の主演が決まったの!」と一報を聞いた。
スタッフ一同、もちろん喜んだが、それ以上に不安もよぎった。その頃(今もだけれど)の青山さんは多事多端の日々。撮影、取材、販促活動、イベント・・スケジュールはあっという間に埋まっていく。そんな時期に、映画の主演を全うすることができるのだろうか。さらに、青山さんは演技が決して得意な方ではなく「台詞を覚えようとすると頭が混乱しちゃう!」とデビュー直後から冗談めかして話していた。例えば今回の監督が、長い台詞をワンカットで忠実に要求してくる演出手法をとったりしたら、どうなるのだろう? 「大丈夫なの?」と聞くと、「分からない! でもせっかく頂いた役だから、青山、やりきってやる! って思ってます!」とアイドル風な口調で宣言してスタッフを笑わせていた。
7月8日。新宿、K’s cinema。上映された「あんこまん」を見た。上映後、不安は掻き消されていた。青山さんは、やりきっていた。
前半から舞台はアパートの一室。青山さん演じる「沙英」と、仕事も私生活も不安定な状況にある「智子」との共同生活が描かれていく。序盤から、青山さんの魅力がスクリーンから最大限に溢れ出る。
カレーライスを作る智子に戯れ付くシーンでは、その無垢なまでの無邪気さを、酔っぱらって智子にキスを迫るシーンでは、可愛らしさを十分に含ませた我儘を、ひとりお茶漬けを食べるシーンでは、救いたくなる切なさを、恐ろしい程自然に演じて醸し出している。とにかく台所が、なんだかとてもよく似合う。
前半の沙英を見て、青山未来に興味を持った方は多いと思う。h.m.pの専属女優だから贔屓目に言うわけではなく、アパートに溶け込んで演じたこれらのシーンは、しばらく忘れられない程に魅力的で、映画そのもののバランスを崩すことなく、沙英の心象を、光も闇も繊細に表していた。
ー6月、青山未来はニコニコ動画の生放送に登場した。
スタッフはアドリブで話し続けることができる青山さんに期待したのか、当日、本人に渡された台本はA4用紙たったの2枚。放送枠は合計2時間、出演は青山未来ひとり。「緊張でお腹いたいだぬー」とさすがに困惑気味だったが、始まる直前、モニターに書き込まれていくファンのコメントを見て、ふう、と笑顔で小さく深呼吸した。中継開始からハイテンションで喋り続け、スタジオ内も爆笑の連続。後半はセクシー未来、全開。深夜ながら視聴者数は合計4万人を超えた。放送後の満足度も記録的に高い9割超。
人気が出れば仕事も増える。やるべきことも増える。要求も高くなる。会う人も多くなり、齟齬が生じることだって当然ある。自分の表現が正しいのか、迷う時だってある。立ち止まって正解を。けれど正解が出る前に、次の仕事がやってくる。
憶測だけれど、監督はきっと、青山さんと役について、あるいはその周辺について、入念に話し合ったのだろうと思う。青山さんも普段は話せないようなことを、監督に話したのかもしれない。監督は台本の役柄を単純投影させるのではなく、青山さんの性格や価値観を慎重に掬い上げ、破綻寸前で止めている。
智子の妹とその恋人が突然アパートに現れ、執拗に家族論を展開するシーン、沙英は静かに現れ、畳み掛けるように反論する。言葉の精度が低くても、その勢い、光線のような鋭さで相手を翻弄させる。夜の車中の何気ない会話シーンでは、見る人に疑問を投げかけてくる。「皆さん、沙英の何が分かるのですか?」と。
詳しい内容は控えるが、映画は後半、智子の変化と、沙英の恋人の独断場に移っていく。この映画、憧れることができる人物は一人もいない。しかし鬱屈とした空気でいらだちを感じそうになるタイミングで、沙英の笑い声や、柔らかい光に滲む沙英が挿まれて、こちらの気分が拡散される。登場シーンが少なくなる後半も、重要な役割を担っている。
そしてどういうわけか、沙英だけが「生き抜いていく自信」を秘めてるように見えてくる。誰にも分からないように、深いところに何枚もの衣で包み込み、幾十ものトラップをしかけて、その仄かな自信を守っている。終盤、智子に部屋を追い出されても、沙英は縋って戻ったりはしなかった。
映画は、セックスシーンや、誇張されたように大きい台詞以外の現場音や、揺らめくカメラワークで、調和がとれそうでとれないまま展開する。勢いのあるシーンと日常性の強い安心できるシーンの落差が、見る人に少しづつ混乱を与える。その構成と演出の妙を、居心地よく感じるかどうかは、是非劇場で見て体感を。
最後に、寂しいが青山さんは今月でh.m.p卒業。7月はイベントが続き、皆さんと会える機会も多い。是非、映画を見て、感想を言ってあげてください。監督を始め、すばらしいスタッフの方々と、全身全霊で作り上げた作品。きっとミクミクしてくれるはず。「あんこまん」は絶賛上映中。
−h.m.p制作部
作品情報・・http://spotted.jp/2014/07/ankoman/
MOOSIC LAB2014サイト・・http://www.moosic-lab.com/
?