アダルトビデオは「18禁」。とはいえ現代、その形骸化は否めない。
しかし「18禁」でなければいけない–そう考えてしまう程、性の価値観を揺さぶってくる作品が『レズ・オーガズム 春原未来×小口田桂子』である。
とにかく一度観て欲しい。観ればその凄みが一瞬で伝わるのだけれども、なかなかそういうわけにもいかないので、当ブログでは作品の魅力を濃密度で紹介してみたい。
『レズ・オーガズム 春原未来×小口田桂子』
現場は「男性厳禁」!異常な空間の中で始まる過激レズ
始まりはホテルの一室。ソファに和やかな表情で座る人気AV女優・春原未来。隣に小口田桂子。撮影は、女性監督の真咲南朋…。
現場に男性の姿はない。そう、この作品は終始一貫、「女性のみ」で撮影されている。
この作品に漂う一般的な「レズ作品」という範疇を大幅に逸脱した”なんとも言えない不穏な感じ”は、そんな撮影環境の中で生み出された。
春原の狂気的なS的追い込みにより、白目を剥いて激しくアエグ小口田の表情がスゴイ
Sの春原がキスと言葉で小口田を追い込んでいく。
「変態…変態…」と言葉で追い詰めながらの激しいキス攻め、喉奥への執拗な指入れ&電マ攻めにより激しくあえぐ小口田。
その追い込みの緩急を監督が秀徹にカメラに収めていく。
春原の向こうにパシパシと音がする。雨がホテルの窓に当たる音である。情景そのものに異質感が帯びてくる。もう早送りなどできなくなる。
10分以上の長いキスを、監督はほとんどカットせずに編集している。
女性同士のキスの尊さを徹底して見せてくれる。
これだけじゃ手ぬるいと、春原は、床に引きずり降ろした小口田の腹を踏みつける…。
その瞬間に放出される大量の潮…潮…潮…。
びしゃびしゃの床の上で、さらに首絞め&連続ビンタで興奮したのか、白目を剥き、泣き叫びながらあえぐ小口田の姿が儚くエロい。?
雨の音がバイブの音に変わる。
春原が小口田に自慰させながら、その首を締めていく。
白目を剥いて「もうイキたい…」と叫ぶ小口田に、絶頂までのカウントダウンを始める春原。
「10、9、8、7、6、5…」達しそうになる小口田を見て、再び「10、9…」カウントはリセットされる。
強烈なエロスである。
路上での調教…そして放尿…
野外調教 in 路上。
首輪を嵌められ、春原に調教される小口田(コートの下は亀甲縛り)。
路上をさまよい歩きながら「キス」…「ビンタ」…が繰り返される。これは「愛」なのか…「狂気」なのか…!?
延々と繰り返されるキスとビンタのループ的世界。
その空間を切り取る監督のカメラセンスが素晴らしい。突き抜けた狂気的エグさが、やがて美しさに変わる韓国映画(キム・ギドク監督みたいな?)を観ているかのようである。
そして…。
調教という世界の中で奴隷と化した小口田は、その場にしゃがみ込み、パンツの上から放尿…。
さらに、感極まって泣き出す。
”気持ち良くて嬉しいから泣く…”。ドMの小口田は語る。
あぁ素晴らしき新世界。
女性同士の、ほとんど正面衝突と言ってプレイで果てる2人
再びホテル。続くSM調教。
キスマークが付く程に激しくキスをし合う2人。
さらに、小口田の股間に指を突っ込む春原。その腕には愛液がドバドバこぼれ落ちるのだが、春原は、それを愛おしそうに舐める。
体液で濡れ合うお互いの肉体。
春原は、小口田の口を自分のアソコで塞いだ状態でのクンニを強要。
「もっとひとつになりたい…」と叫びながら求め合う2人。
興奮しきった春原は、双頭バイブを自らの喉奥に突き刺しイラマ。
ものすごい分量の嗚咽と唾液…。その唾液でキスしあう2人。
そのままお互いの指を、それぞれの喉奥に突き刺し、刺激し合い、激しい嗚咽&涙の中、双頭バイブで「イクイクイクイクぅぅぅぅぅ」と大絶叫のまま果てる。
異常テンションの中、作品は後半へ。ここから歪んだレズの形が剥き出しになっていく
後半戦はもっともっとヤバい展開に発展。
肉体的なヤバさから、精神的なヤバさへと突き進んでいってしまうというか。
本来なら、もっと詳細に内容をお伝えしたいのですが、ここからは自分の目で映像を観て確かめていただきたいんです。実際、上がってきたVTRを観た瞬間、ド肝を抜かれました、ほんとマジに。
湯船に浸かり語り合う2人。そして再びキス…。そのキスは次第に激しくなっていき、そのまま顔ごと湯船に沈んでいく小口田。
死と隣合わせの性が見事に象徴された美しすぎる場面。
「(春原)未来さんしか感じなかった。(湯船に顔が浸かった瞬間)何も聞こえなくて…」と語る小口田。
…と、このまま美しい場面で終わるのかと思いきや、ここから不穏な空気が流れ出す。
お互いの気持ちを伝え合うべく激しくまぐあう中で、小口田は「未来さんの事が好き…」と告白。
しかし、春原は、小口田の気持ちを裏切るかのように、突如、激しくビンタし始めるのだ。
何回も何回も。
次第に挙動がおかしくなり始めた小口田は、反射的に春原にビンタをし返す。
「ビンタやめてください、痛いんです」と泣き叫ぶ小口田に対して、春原は「もっと知りたい、だから教えてよ、わたしは叩かれても興奮するんだよ」「…その気持ちをもっともっとぶつけなよ!」。
これは、心の底の底まで激しく求め合いたいと願う春原にとって、小口田の中にある”一種の壁”を壊す作業だったのかもしれない。
この瞬間から、この作品は「単なるレズ作品」の向こう側へと飛躍する。
ラスト。
「無理に感じようとしなくてもいいし…」と語る春原&小口田の主従関係を取っ払ったレズSEX。
心からの快楽を求め合う2人。
お互いがお互いを本気で求め、愛し合い、精魂尽き果てるまで続くSEX。
そこに男性器がないからこそ、より激しく、精神的な領域にまで踏み込んでしまったレズ作品を超えたレズ作品。女優2人もすごいが、それを撮影した真咲監督にも拍手を贈りたい。
傑作。
間違いなく傑作であるが、問題作でもある
作中の昼食の場面。
春原はマズローの欲求5段階説を引き合いに出して、「性欲を満たすことで人のためになりたい」と話す。小口田は「もっと自分を知ってみたい」と話す。
二人とも幸福は欲を満たすことにあると信じているところに、この作品を今、見ることの切実さと、ユーモアさえ帯びる儚さがある。監督は直感でそれを見切っていたのではないか。とにかくも、その切り口の鋭さに、えも言われぬ中毒性があることは確かだ。
今、AV界で最も注目を集める監督–真咲南朋(まさきなお)。
確かに圧倒的に凄すぎる監督である、脱帽。
この作品は180分という異常な長さの作品になってはいるが、カットすべきシーンも見つけられないほどに素晴らしいのだが、正直、問題作でもある。
ただし。
観始めたら最後、早送りなど出来ない内容であることは保証する。