映画「セックスの向こう側」上映レポート!
AV男優の仕事と人生にスポットをあてたドキュメンタリー映画「セックスの向こう側」が話題になっています。現在、渋谷アップリンクファクトリーで上映中のこの作品についての感想などを。
AV男優といえば、世間的にはマニアックかつ色眼鏡的に見られる職業ですが、一徹さんが女性誌で大々的にフィーチャーされたり、地上派のテレビで取り上げられたりして、これまで興味のなかった女性ユーザーからも注目されたりするようになりました。まあそれでもAV男優というのは特殊で特異なジャンル。一説によると、AV女優が何万人という単位でいるのに対して、AV男優は70名程度なんだとか。実際に会って話してみると全然フツウ、かえって爽やか! もう今日からファンです! となることが経験上わかっていますが、さてこの映画、どうなんでしょうね。
実はこの日以前に、トークイベントがある日に勇んで出掛けたものの、立ち見席も含めたチケットが完売してしまったために入れなかったという苦い経験がありました。この「入れない!」「満員!」というのも話題で、監督によれば、チケットはほとんどの回で8時45分の上映開始3時間前には既に売り切れているのだとか。ということで、次は絶対に見るぞと半ば意地になって出掛けたのでした。
午後の早い時間だったので整理券はまだ余裕。上映前に人気AV女優の秋山祥子ちゃんと待ち合わせての入場です。この映画、AV女優は500円で見られるというのも話題、で、祥子ちゃんもしっかりとワンコインで入場できました。「カンパニー松尾×秋山祥子」のパッケージを呈示したのですが、受付の女性はジャケットをチラ見しただけで割とあっさりとした確認の仕方(笑)。 オシャレで快適そうなソファ席を陣取ります。上映まであとちょっと!
この日は特にトークイベントなどのないノーマルな上映スタイル。それでも、立ち見がいないくらいでほぼ満席状態です。ロングランの上映も決定しているとのことですがそれも頷ける客入りです。会社帰りっぽい、40〜50代くらいの男性おひとりのお客様が多かったですが、若い女性の姿もチラホラ。カップルもいらっしゃいますが、ごくごく普通の20代の恋人同士という感じ。「“テッド”見にいく〜?」みたいな感覚でこの映画が選ばれたとしたら嬉しいことです。
映画自体は新旧交えた有名男優さんたちのインタビューをもとに進められていくごくごくシンプルなもの。同じ質問を投げかけ、ほとんどの男優さんが同じような答えをしていることもあれば全く違う答えが出てくることもある。その差異を楽しむ感じかなと思いました。余計な演出がないぶん、彼らの本音が引き出されていた印象があります。
興味深かったのは男優歴の長い人ほど「男優の仕事なんかやりたくなかった」と答えていること。撮影現場のスタッフとして働いているうちに出演しなければいけなくなった…本当は嫌だったけれど…仕方なく…と、かなり消極的にこの世界に足を踏み入れている人が多かったです。対して、黒田さん、しみけんさん、森さんといった若手たちは「AV男優になりたくてメーカーに応募した」といういわば超積極派。しみけんさんがメーカーから「うんこ、食えますか?」と言われて、これを逃したら男優にはなれないと思い「…はい…食えます」と答えてしまったというくだりなどは笑わせられました。しかし、そんな彼らも立派なA級男優になっているのですから恐れ入ります。
創成期の80年代は、AVといえばワケありのコや風俗上がりなどとことん日陰のイメージで、実際に「イメージビデオのお仕事」と言われてきたのにふたを開けたらAVだった…でも断れなくて…とイヤイヤ仕事をしている女優も多かったと聞きます。しかしながら、テレビ番組にAV女優が堂々と出演し、AVアイドルのCDがチャートインするなど、女の子にとっては「憧れの職業」とまでなっているような現在では、自ら「AV女優になりたい」と事務所の門を叩くコも少なくありません。もちろんそんな彼女たちのセックスには悲壮感は漂っておらず「セックス大好き!」「もっと有名になりたい!」とハキハキ、明るいものです。女優と男優という差はあれど、ネクストジェネレーションたちには共通した意識があるのかなと思いました。
映像の中には「AVあるある」がいくつかあって、隣に座っている祥子ちゃんと一緒に声を立てて笑ってしまう場面も。「セックスの向こう側」というタイトルだけ聞けば、どんだけセンチメンタルにさせられるのかと思っていたりもしたのですが、いやー、素直に楽しかった、面白かった! 撮影現場のリアルな様子なども見ることができて、一般のお客様にとってもタメになる映画になっていると思います。
東京・渋谷アップリンクファクトリーでの上映は3月29日まで決定しているようですが、これは超ロングランの可能性もあるのでは!? 他にも各都市での上映もあるそうなので、公式サイト等で情報をチェックしてみて下さいね。女性の一人客でも全く問題ナシです。DVDではなく、ぜひ劇場でこの熱気を体験してみて欲しいものです。知らないひとと一緒にセックスシーンを見るというのも結構楽しいですよ〜。